issues.jp

『つれづれアート漫想』について

 

きまじめなお遊び

あなたは美術展を、
どのように楽しんでいますか。
私は、すべての展示物のなかから、
これぞというお気に入りを
発見するのが好きです。

一品だけお持ち帰りできるとしたら、
どれがいいだろう?
選んだ作品に特別なエネルギーをそそぎ、
記憶に刻みつけておく。

大規模な企画展など、何年もたつと
まるで想い出せなかったりするけれど、
一つでも鮮烈な記憶があれば、
自分の内にたしかな個性の種を
蓄積できている気がするのです。

ところで、
りっぱな施設で古典美術を観賞することは
じつに幸せな体験ですが、
ある意味で異様な現象でもあります。

現代の一般人は、
日がな一日まったりと
美術館に入りびたってはいられない。

朝一番には、かかりつけの病院で薬をもらう。
美術館を出たら、気位はキープしたまま
中目黒で北欧家具を眺めつつ、時間をつぶす。
夜には友人と、背伸びしたフレンチディナー。
帰りには半額デーを逃さずに
海外ドラマのDVDをまとめ借りし、
小腹が空いてきたので、
近所のコンビニによってから家路につく。

古典美術というのは、
物理的にも心理的にも
こうした「外側」の日常から
かけ離れた存在のような気がする。
昔の絵画や彫刻だって、現実なのに。
この世を去った人々のものではなく、
私たちのものであるはずなのに。

もちろん、現実逃避は楽しい。
でも、ごっちゃにしてみてはいけないのかな。

洞窟壁画から始まった、
人類の芸術的いとなみ。
作品を分析し、体系化し、
さまざまに解釈してきた
古今東西の研究者たちによる膨大な蓄積。

いったんぜんぶ忘れてしまって、
目の前の「もの」を観てみたい。

体の芯をゆさぶる大音量の電子音楽や、
腕にしっくりなじむ
喫茶店の天然木カウンターのように、
作品の表層との純粋なふれあいを
楽しめないものだろうか。

これは一人の
もの書き/アート系翻訳者による、
ささやかなる実験です。
くだらないことやってんな、と
御笑覧いただければ幸いです。

登場するのは、
私のプロデュースする作家・
淺川瑠未(あさかわ るみ)さんと、
お姉さんの山奈靖代(やまな やすよ)さん。

ある展覧会の一つの作品をお題に、
お二人に気ままな放談をしていただこう、
という趣向です。

それぞれの記事の冒頭には
作品画像とともに、
簡単な説明のみを付しました。
その作品について、あなたはどう思うのか。
お二人の対話を読む前に、
ちょっと考えてみていただけると
面白いかもしれません。

 
 

登場人物紹介

瑠未アイコン淺川 瑠未(あさかわ るみ)

東京都出身。
都内のわりと有名な
洋服・インテリア・雑貨等の
輸入販売店に勤務。
暇さえあれば、
あちこちの美術館や
名画座に通っている。
まち歩きが好きで、古い喫茶店がオアシス。
いい年こいて文学少女気質がまったく抜けず、
しょっちゅう空想の世界へ羽ばたいている、
困った社会人。
ちかごろ明らかにオーナーから怒られる回数が
減ってきたので、危機感を抱いている。
とはいえ趣味が高じてか、とうとう最近
作家デビューを果たしたらしい。

座右の銘は「暑さ寒さも彼岸まで」。

 

靖代アイコン山奈 靖代(やまな やすよ)

佐賀県の離島出身。
某大学院にて生物学研究室を
うけもつ准教授。
水草やアクアリウムが好き。
美術には門外漢ながら、
鋭敏な知性とまっとうな良識
の持主であり、妹の無責任で
あいまいな物言いは
見逃さない。
自他ともに認める酒好きであり、ワインと
日本酒には目がない。
「非合理なことはきらい」と言っているが、
気まぐれにぶらりとアウトドアに出かけたり
アナログな機械式時計が好きだったり、
はたから見ると例外はけっこうある。

座右の銘は「清く正しく生涯愛煙」。

 
 

プロフィール下部用

挿画担当:おとないちあき

 
 
 

The following two tabs change content below.
アバター
【活動】アート系翻訳者。創作のさいには作家・淺川瑠未を演じます。365日マンダラノベル「#みぎわの夢」を連載中。本そのものを芸術作品と捉え、小説本をセルフプロデュースで制作しています。【嗜好】美術館・名画座・喫茶店に生息。竹久夢二、藤子不二雄、キャロル、ウルフ、ゴーリー、ボルヘス、小泉八雲、宮沢賢治に毒された仏教徒。
© 2019 issues.jp . All Rights Reserved.