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7 幻像のアルバム

Abstract

 

淺川瑠未の人生における「ほんとうにあった」エピソードたちです。
「母の遺品を姉と整理していたら、昔の写真のつまったアルバムが
沢山発見されました。盃を交わしつつひと晩徹夜で語りあった時の
ことを、想い出しながら書いたものです。」
メインストーリー、わけても『古都ものがたり』『ふる郷にて』を
読み解く上でおおいに役にたつとか、たたないとか。  

 

Fragments

 

1 京都の因と縁
なに探してるの?アルバム。卒業祝いに連れていってくれたじゃん、京都。ああ。雪のなか、方向音痴の人力車に乗ったっけ。金閣寺にも辿りつけないとか、ありえないよね。あった。娘二人のおもいで達が、神経質な線画で覆いつくされている。センチメンタルな母親だ。ゆるしてあげな。うん。

 

2 沖縄旅行初日
記憶の多重露光。構図を無視した、だいだいの肖像。暑かったなぁ。大学時代?そう、映研のみんなと。空港からハイだったのにいの一番がひめゆりの塔で、しんみりしちゃって。なんか、いたたまれないな。献花のとき寸劇調で、ふざけてたからかな。現像してびっくり。焼増しは、しなかった。

 

3 ある夏の夕方
玄関脇に生えてたね、この樹。チビ助だなあ。お姉ちゃんは幾つ?中学2年かな、年の差が出るよね子供は。笑えよ。公園に行ったんだよ、おばさんるみちゃん借りてくね、って。憶えてる。盆踊り用の朝顔の浴衣も。クジ引きの神様事件も?怖かったなあ。ついてるって、憑いてるってことかもね。

 

4 お婆ちゃんとお姉ちゃん
喫煙姿、ほんとそっくり。脚の組みかた、指の形も。穏やかな顔だこと。わたしと会うと、ツンケンしてた。嫌われてた?避けられてた、のかな。どうして。気味がわるいからでしょ。そうかなあ。子供の自分が、孫になって会いに来るんだよ。早々に駄目出しされたみたいじゃない、己の人生に。

 

5 うりふたつ
ユニークな百鬼夜行だね。島のお祭りらしいよ。こっちでしょ、おばさん。こんなときは愛想よく笑いそう。分かってらっしゃる。なんでそっくりな着物、着せるかなあ。双子だから。だから、なぜ。可愛いから?お人形だよね、結局。ハレの日に刷り込まれるなんて、残酷だな。無表情な片われ。

     

6 幼なじみ
水、綺麗じゃん。秋川渓谷だよ。いい所だよね、温泉もあるし。村治家に毎夏、連れてってもらって。楽しかったな、河原でキャンプ。貴子ちゃん?そう。変わらないな。二人で陰と陽、って感じ。わたし、そんなに陰気?見た目というか…本性?収まりがいいもの。別れたらそりゃ、荒れるわな。

     

7 水いらず
珍しく二人で映画館、母親命令だけどね。他人行儀な父娘だな。笑っちゃうよね、この距離感。一緒に観たの?ドラえもんを?まさか、屁理屈の帝王だもん。外で待ち合わせたら案の定、目がすわってて。つれて帰るの大変だった。どっちが子供か判んないね。どんなひとか解らなかったよ、結局。

     

8 ひとりきりの恩師
個性的な風貌だね。一番、というか唯一好きだった先生。不登校のくせに家には押しかけていって、はた迷惑な生徒だよね。何の先生?う〜ん、よく判らん。どういう意味?教科は英語だけど、平気で歴史や数学を絡ませてくるし。漫画マニアだし。巧みな話術で、ぜんぶ面白く思えた。そりゃ、教師の鑑だな。

     

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