issues.jp

§4-4 橋口五葉 ― まじまじ観なけりゃ始まらない

五葉

展覧会名:『大浮世絵展』

会場:江戸東京博物館

会期:2014年1月2日〜3月2日

《化粧の女》とおなじく、私家版として晩年に制作された。いわゆる大正新版画の特質がよく表れている。河瀬巴水の諸作とともに、スティーブ・ジョブズのコレクションとしても知られる。

江戸東京博物館ほか所蔵。

 

 

瑠未アイコン  
 
わたしは今まで、絵画を観てストーリーを想像するのと小説を読んで映像をイメージするのとは、
なんとなく違う行為のように考えていた。でも「朗読をつうじて本を読む」というまた別の
体験をしてみて、けっきょく似たようなことをやっているのかも、ということに気がついた。

 

 

靖代アイコン  
 
漫画にしたって、固定化されたイメージがたくさん描かれているから受け身的なメディアにも思えるけど、
いくらでも攻めの観賞はできるしね。

 

 

瑠未アイコン  
 
与えられた物語の種をいかに自分なりに育てて楽しむか、という点では、共通してるよね。

 

 

靖代アイコン  
 
物語性のないやつは?抽象画とか。

 

 

瑠未アイコン  
 
わたしは抽象画にも、物語性はあると思う。繊細な白身魚の刺身みたいに、難易度は高めかもしれないけれど。その気になれば、どんな作品の中にも見つけられるはずだよ。

 

 

靖代アイコン  
 
でも、べつに無理して見つけなくたっていいでしょ?ひたすら文章そのものの巧みさや、絵具の色彩の美しさを味わっていたって。

 

 

瑠未アイコン  
 
もちろん、楽しみかたは当人の自由。個人的には、コンセプチュアルな作品もかっこいいけど、やっぱり豊かな物語性を提供してくれる作品のほうが好きかな。かといって、あざとすぎるのはいやだけど。
 
 

 

靖代アイコン  
 
これ見よがしに泣いたりわめいたりする映画とか?

 

 

瑠未アイコン  
 
最近の日本映画に多いのは、なんでだろうね。つつしみ深い国民性のはずなのに。 

 

 

靖代アイコン  
 
一種類の「国民性」とやらでひとくくりにできないだろ、今の日本人は。

 

 

瑠未アイコン  
 
たしかにね。そうしてみると、あらためて『髪梳ける女』はいいな。ほのかに匂わせる演出もありつつ、叙情性もたっぷりで。
   
 

 

靖代アイコン  
 
橋口五葉は、ずっと版画ばかり作っていたの?  

 

 

瑠未アイコン  
 
ずっとというか、40歳くらいで早世したから。この作品を制作した1年後、大正10年没。

 

靖代アイコン  
 
そうだったんだ。志半ばっていうのは、無念だろうな。 

 

 

瑠未アイコン  
 
でもだからこそ、後世に鮮烈な印象も与えるよね。まあ、作家本人の人生と作品とは、切り離して考えなきゃいけないけど。

 

靖代アイコン  
 
夭折の天才、みたいな?

 

 

瑠未アイコン  
 
死んだら、そこでピリオドだからね。何かのはずみで道を踏み外しちゃって、晩節を汚すような恐れもない。

 

 

靖代アイコン  
 
じゃあアル中になる前に早世しようかな、再来年あたりに。

 

 

瑠未アイコン  
 
じゃあ、腕時計のコレクションはわたしに頂戴ね。遺言状に明記、よろしく。
 
 

 

靖代アイコン  
 
いいよ。遺影の写真は、屋久島の縄文杉の前で撮ったやつにしてね。

 

 

瑠未アイコン  
 
顔をアップにしたら、分かんないじゃん。

 

 

靖代アイコン  
 
アップになんかしなくていいよ。引きのまんまで。

 

 

瑠未アイコン  
 
ああ、それいいね。友人知人にまじまじと眺められるのも、なんか照れるし。

 

 

靖代アイコン  
 
爽やかな笑顔の写真とかマジでやめてほしいわ、もう死んでるのに。

 

 

瑠未アイコン  
 
いっそのこと、変顔がいいんじゃない?なごやかなお焼香になるよ。

 

 

靖代アイコン  
 
ある意味嫌がらせだな、それ…。

 

 

 
4-4

『橋口五葉』コラム
4-1

§4-1

4-2

§4-2

4-3

§4-3

4-4

§4-4

4-5

§4-5

© 2019 issues.jp . All Rights Reserved.