§4-5 橋口五葉 ― 完全なるジャケ買いで
展覧会名:『大浮世絵展』
会場:江戸東京博物館
会期:2014年1月2日〜3月2日
《化粧の女》とおなじく、私家版として晩年に制作された。最高の技術と最上の材料との結晶体であり、いわゆる大正新版画の精髄をよくあらわしている。河瀬巴水の諸作とともに、スティーブ・ジョブズのコレクションとしても知られる。
江戸東京博物館ほか所蔵。
一つの小説をうまく朗読できるまでとことん読み込んでみたら、全然ちがう風景が見えてくるかもね。わたしもやってみようかな。
やればいいじゃん。
じゃあ、観客第一号になってよ。
いいよ。うちのラボの子達も連れてってあげる。
えー。
私だけじゃ意味ないだろ。べつに野次ったりしないから大丈夫だよ。
そもそも朗読に、野次の文化なんてないから。
じゃあ客はずっと黙ってるの?「意義なしっ!」とか「中村屋っ!」とか言わなくてもいいんだ。
合いの手なんか入れられたら、世界観が壊れちゃうって…。子供のころ、親とか祖父母に読み聞かせてもらったイメージだよ。
でも子供って「なんで悪いやつなのに殺さないの?」とか「え〜、そんなのズルいよ〜」とか、しゃべりながら聞いてるじゃん。大人はやっちゃいけないわけ?
なるほど。たしかに少人数なら、つっこんでもらいながら読むのも面白いかもね。インタラクティヴ朗読。
それやろうよ、楽しそうじゃん。
でも、ぜんぜん先に進まなかったりして。
盛り上がったらただのディスカッションになりそうだな。
いいんじゃない?一晩で一つの作品を、徹底的に語り尽くす。
で、何を読むの?
そうだなあ…。朗読してみたいのは尾崎翠とか小川洋子とかだけど、そういう趣向ならミステリも面白いかもね。
あっ、私もう犯人わかった!みたいな。
いやその伏線バレバレだから、みたいな。へたな作品だとコテンパンにされちゃうだろうね。
むしろへたっぴなほうが、いじりがいがあっていいんじゃないの。何か、聞いたこともないような作家を選んでさ。
じゃあわたし、神保町の古書店のワゴンセールで一冊100円のやつを見つけてくるよ。完全なるジャケ買いで。
でもそしたらあんた、練習しちゃ駄目なんだよ?
あっそうか、犯人が分かっちゃったらつまんないんだ。でも語り手がホスト役になればいいんじゃない?それはそれで隠す愉しみがあるし。
誰も当てられなかったら、親の総取りか。過去の戦績に基づいて一人一人オッズを決めればいいんじゃない?わざとミスリードし合ったりして。
…なんか、ギャンブル性高すぎない?
なに言ってんの。なにかを賭けるからこそ、テンションが生まれるんじゃない。馴れ合いなんかじゃ成長しないわよ。
いや、成長とかそういうんじゃなく…。
私の友達のやってるジャズバーでやったら?雰囲気はいいし、いいお酒もたんまり置いてあるし。こんど会ったら話しておくから。
もはや朗読会じゃないけど、まあいいか。
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