§4-2 橋口五葉 ― コロネとコリネじゃ大違い
展覧会名:『大浮世絵展』
会場:江戸東京博物館
会期:2014年1月2日〜3月2日
《化粧の女》とおなじく、私家版として晩年に制作された。いわゆる大正新版画の特質がよく表れている。川瀬巴水の諸作とともに、スティーブ・ジョブズのコレクションとしても知られる。
江戸東京博物館ほか所蔵。
おっ、今回は日本のやつじゃん。
イエス。橋口五葉です。
漱石・鷗外・鏡花の本の装丁でも有名な、明治・大正期の版画作家。
なんか聞いたことある名前だな。ほらあの、五千円札の。
樋口一葉?
そうそう、関係はあるの?
画号の由来は別らしいから、直接的な関係はなさそう。
でも図らずも二文字かぶるし、おなじアート系だし、意識していた可能性はあるね。
文壇にゆかりのある人だから。
「おれは一葉より五倍すごいんだ」って、張り合ったわけじゃないのか。
ドバイタワー(ブルジュ・ハリファ)じゃあるまいし、そんなわけないじゃん…。
実家の庭に生えていた、樹齢三百年の五葉松にちなんだらしい。
そんな松が、自宅の庭に?ボンボンだったのかな。
薩摩藩の藩医だった士族の三男だから、まあ、家は継げないけれど暮らしにゆとりはあるから、絵描きを目指せたんでしょう。
十九歳のときにお兄ちゃんを頼って上京、橋本雅邦に弟子入りした。
なんか、知りあいの弟を想い出すな。
医者の息子なのに東京のその子の家に居候して、酒を呑みながら絵ばっかり描いてるの。
…..まず日本画から入って、洋画も学び、やがて雑誌『ホトトギス』の挿絵や有名作家のブックデザインで活躍。大正新版画運動への参加をきっかけに、版画へものめりこんでゆく。刷りものが好きだったんだろうな。
これって、浮世絵だよね?
そうだね。江戸時代の木版画を綿密に研究したうえで作られている。
カテゴリ的には、美人画と呼ばれるもの。
なんで浮世絵って、みんな無表情なの?
一説には、観るひとの想像をかき立てるため。
内に秘めてあらわさないのを好しとする日本的美意識の象徴、みたいに言われたりもする。
そのかわりに、髪型や衣装、仕草なんかの表現を通じて、いろいろと暗示するわけ。
にしてもさ、あまりにもポーカーフェイスすぎない?
今のわたしたちから見るとね。でもこの版画はひと味違いますぜ、旦那。
文明開化の時代らしく、いろいろ新しいことをやっている。
そうなの?べつに、ふつうの浮世絵に見えるけど。
もっと細かく観てみてよ、全然ちがうんだから。
まあ藻類も、種によって全然ちがうからね。ディテールを愛でることによって繊細に区別をつけたくなる気持ちは、よく解るよ。
わたしが水草を見ても「これぜんぶ藻でしょ?」としか思えないもんね。
ムカッ。
ほら、腹立つじゃん?他人の趣味嗜好は尊重しましょう。
水草と藻類の区別もつかないとは…嘆かわしい。
あんたにはこれからじっくり、クリプトコリネの魅力を叩きこんでいく必要がありそうだね。
いいねえクリプトコロネ、美味しそう。
東南アジアに行けば、いくらでも食べられるよ。
ドラム缶に詰めて送ろうか?着払いでよければ。
すみませんでした。
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