§2-2 ミュシャ ― 人生いろいろ、非日常もいろいろ
アルフォンス・ミュシャ『イヴァンチッツェの思い出』1903
展覧会名:『ミュシャ展』
会場:森アーツセンターギャラリー
会期:2013年3月9日〜5月19日イヴァンチッツェ市は、ミュシャの故郷。
チェコ共和国東部に位置する。
原画はパリ時代に描かれた水彩画で、のちに市がポストカードとして発行した。
イヴァンチッツェ市蔵。

――で、今回はこれ。
ミュシャの『イヴァンチッツェの思い出』。

まさしく不思議ちゃん全開だな…。

このひと、背景とミスマッチじゃない?
それがどうしても気になって。

ダークな雰囲気なのに、幸せそうだよね。

魔女なのかな、と。背景が古城っぽいし、むらがる蝙蝠は、彼女のしもべたち。
そういうゴシックな要素に囲まれて、うっとりと――タイトルによれば――追憶にひたっている。
なんか、ミュシャっぽくないよね。

お花畑ポーズと、周囲とのギャップがおかしいんだろうな。
ちょっとやってみてよ。

えっ、なにを。

このポーズ。

え〜、こんな感じ?

………。

………。

……くくく、バカみたい。

……ケンカ売ってんの?

いや要するにだね、わたしはそんなポーズを
人生で一度たりともやったことはないし、
罰ゲームとしても御免こうむりたい、ってこと。

劇的に誇張された、非日常的なしぐさ?

映画でも、そういう演技を見ると吹き出しちゃうんだよね。
主人公に翼が生えてても、タイムマシンが登場してもべつにいいんだけど、
そういう不自然さは気に食わない。

あ〜、わかる。

ミュージカルも苦手だな。真顔で会話していたのに、いきなり歌いはじめるじゃない?
あれがどうしても、ねえ。いつでも笑っていいんなら観るけど。

そりゃ、周囲から白い目で見られるよ。

やっぱり?まあ古今東西、優れたオーバーな表現はいくらもあるだろうし、好みの問題なのかな。

この作品についていえば、もちまえの上品なトーンやレイアウトのセンスも相まって、良い意味での違和感を生むことに成功していると思う。まさにミュシャ流の「筋金入りの斬新さ」だよね。

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